見上げたその岩は異様な艶っぽさを放っていた。
過去通ったどの巨石とも違い、道筋のみを引き立たせる奥ゆかしさを持つ。それでいて威圧的。
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確か春のこと、福岡の先駆者枝村さんから電話があった。
「やばい岩があったけど、整備した後があったからこれやってるよね??」と確認の内容。
過去登った岩はどれもうっすらながら記憶には残っているが、聞いた内容の岩はそのどれとも該当しなかった。
確か4月、偶然が重なり枝村さんと会う。岩の情報を聞くと、やはり過去誰かやったあとがあるらしい。枝村さんの仲間たちも周辺の岩も登り、一旦は落ち着いた模様。
そして6月、別件の岩の話をするためメッセンジャーでやり取り。本題も落ち着きその岩の話題に。私も見に行かせてもらえることとなった。
実はこの岩、うちの栗崎も発見していたようで。予想外に順調にたどることができた。
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6月26日
一旦気になり出したら居ても立っても居られなくなる。店番前にバタバタ見に行くことに。
先駆者が築いた道を辿る。アプローチも綺麗に整備されていた。
そして例の岩を見上げる。
道は在る、そこに私が到達しているか……。
岩質は花崗岩、この手は大体にして強度とシーケンスが読みにくい。増してかなりランディングの悪いハイボール。完全に呑まれた。ただ呑まれるという感情は登りたい意志と共に発生する。
有難いことに下地も適度な整備がされてあった。かなりの大昔に一度、最近もう一度。最近の整備は枝村さんの仲間達だと思う。変な落ち方をしない限りは大丈夫な気がする。
店番まで1時間ほど余裕があったので、少しだけやることに。というより、ここで帰ったら威圧感にやられ当分来れない気がした。
核心はきっとハング出口、リップへの一手。うっすら描いていたmoveは2度のホールド欠損により激しく難しくなった。ここで時間切れ……
とてもイメージが悪い、この時点では次の秋にやれる気になれず。
可能性を探るべく、近々もう一度来ることを決め撤収。
(続く)