「こりゃ無理だ、成ってはいそうだけど」
一眼見て諦めた。
連れてきてくれた工藤さんは隣で嬉しそうに見上げていた。
出張のたびに足を運び見上げたが、やっぱりない。
デカすぎるその風貌に見合わないランディングの悪さ。やれる気がしない。
2023年秋
早々にリルラリルハv12が完成。時間ができたのでその岩を掃除してみることに。
ハング抜け上部へと繋がる外傾した棚は右に伸びている。
本来なら右に進むべきなのだろうけど…ランディングが悪すぎる。
ダメもと弱点を無視し直登ラインの掃除をしてみるもガバはおろかカチすら出てこなかった。
仕方なく右を掃除すると、やはりラインは存在していた…。
やるしかない、ことがわかった。
12月4日
めじろんカップ翌日、
やらない言い訳がないほどに晴れた。
気は重いが出向く。
濡れていた前回とは違い、岩が岩の色をしていた。
ロープに下がり状態を確認し流石にリハーサルをする。
上部のムーブは悪いままだけど、状態、そして感触は前回より遥かによく。
問題は下部。ハング中のムーブができるか少し心配だったけれど、乾いたホールドを触った瞬間できると確信した。
状態が良くなる瞬間を待つ、そして夕方。
強度の高い下部を超え上部へ。
万が一失敗してもマット位置は完璧だと思う。
意を決して突っ込む。
フェイス中の核心を超えマントル。岩が露出していないので、ありのまま根っこや土を探り慎重に抜けた。
ー 森羅万象 初登
岩の様、在る場所、離陸し岩の中を通り樹林帯に抜けるまでの内容と目に入る景色、全てが壮大に感じた。
初めて案内いただいた日から下流に向かい進んできた。
ドンコルレオーネ、
舞空道、
ブラッディメアリー、
リルラリルハ、
そして森羅万象。
どの岩も忘れ難い。どの岩も人が居てドラマがあった。
どの岩も開拓者の熱意を感じる瞬間があった。
良いエリアに育ってほしい。
次からは上流へ、また。