「糸島ニラカナエリアー2018」カテゴリーアーカイブ

最良と最難の後…

そいつを登った秋、
間伐工事がはじまり、ようやく落ち着いた頃、果敢なトライにより骨折者が…。
(詳しくは不明)

印象も薄れ、何となく足も遠のいていた。
そもそもここに私自身用事はない。

久々に見上げたそいつは小さく見えた。

ニライカナイ V13

「今ならロープを使ってmoveをバラしたりしないな」
そんな後ろめたさもあってのことだろう。

この日は取り付く気になれなかった。

ただただ同志のトライを眺め…

何て楽しそうに取り付くんだ。
羨ましく思った。

こいつはもしかして未だ最良の課題なんじゃないか?
そう思いなおした。

翌週、遠方から訪れた同志を隣に再び同じ光景が…

こいつは国宝級だなんて言われたら確認せねばならないじゃないか。
気づけば取り付き、再び夢中になっていた。2年が経ち流石に多少は上達しているようで、あの日の初日に比べ感触は良かった。

再登ならずではあったが、しっかりと動作を要求される構成、岩の質とスケール、見栄え等全てを考えて…やはり私にとって未だ最良の課題だと思う。
(追伸、課題本数は少ない上近隣にてシビアな問題がある…ただやはりこれは何とかせねばと……。多少の注意事項込みで公開出来たら、と思う。改めてそう思わせてくれた皆に感謝。)


さらに翌週、次は我が最難課題のあるOzへ。

スケールこそ在るものの、ニライカナイを見たあとではやはり霞んで見える。
ただここには私の執念がある。AveMaria v14をやった。
結果、核心パートが1moveもできないどころか他のパートもギリギリの精度。もはや2度と登れる気がしない。今の私にとって明らかな限界値。(というか今現在の限界を超えている気がする…)

最良と最難を改めて確認し、今進行している可能性を思うに
この2本を超えてくる課題は思いあたらない。

ただ、今はまだ登りたい一本がある。
今シーズンは間に合わなかったが来シーズン。案内頂いた頃の自分じゃ可能性すら見出せなかった、今なら何とか…
来年春までには良い報告が出来るよう……。
もう少しだけ強くならねば。

ニライカナイ

4月16日
奇しくもこの日、生涯最高のクライミングが出来た。

3月中旬、それは偶然の出会いであった。
天気は曇、光がない方が森の中は鮮明になる。
道中、仲間が見つけたそいつはとてつもない存在感を醸し出していた。

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一目惚れだった。
巨大なハング、微かに見えるホールド。
成るか、私に為せるか。
それが不鮮明なところがまた唆る。

3月28日 / 4月3日
考えた末、ひとつの妥協をした。
後になって思えば、その妥協は私にとってはとても重大なことだということに気付いた。

その妥協とは、二日間に及ぶロープを使っての整備。
中間部の明らかに浮いたフレークを落とした。
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それだけに留まらずロープを使ってのホールド確認、そしてラインの確認。

最初に可能性を見た右カンテに向かうラインは、顕著なスローパーからカンテに出る一手が距離的に不可能だということが分かった。
次に左に向かうラインは、浮石が落ちたことにより消滅。
絶望を感じたが、3度目のぶら下がりで、右カンテに抜けるときに見た顕著なスローパーから直登の可能性も見てみる。
その間に一つカチを見つけたことで、可能性を感じたがそれはとてつもなく悪い。
言うなればもうそれは私の想像できる次元を遥かに超えていた。

ラインは成っていた。ただ私には無理だ。
そう感じた。
しかし、よくよく思えば直登の際に見たカチ、それは右抜けでも使えるのではないか。
もう一度ぶら下がる。
カンテから目一杯手を伸ばせば届く位置に、そいつはあった。
私でもこれなら何とかなるかもしれない。
希望を感じた。

4/11
本格的にトライ開始。
下部から悪く、中間部の顕著なスローパーまで一度しか到達出来ず、その貴重な1便も恐怖心に負け降りる。
ただこれで勝負にはなることが分かった。

4/16
2日前に岩場に行けるチャンスがあったが、この日に備えるべく指皮と体力温存に充てる。
何となく強度を把握出来た前回、この日が今季最後のトライになることが分かった。

早朝、まさかの事態。
まだ気持ちの整理が出来ていないので多くは書きたくないが、言わずもがな震災が起きる。
私も少なからず影響はあった。
ただ、今回はクライミングの話に徹す。

直前まで行くかどうか迷っていた。

身内のことももちろんあるが、そうじゃない部分もある。
自身のクライミングに於いて、如何なる時もほぼ楽観的なのに今回は初めて行く前に恐怖を感じた。

ただでさえリスクのある課題。
もしトライ中に地震が起こればどうなるのだろうか…。

迷っている合間に、とうとう朝が来た。
メンタル以外の準備は万端、イメージすらもう出来ていた。
結論出せぬまま、車を走らせ、気付けば岩の前にいた。

岩の前に立つと不思議なもので、自然と登りたいという気持ち以外はなくなる。

アップを終わらせ、トライを開始した。
下部を突破出来たその1便は、スローパーから落下した際の衝撃を確認すべくとび降りる。
腰まで響く。
カンテとりの凶悪な一手で落ちても何とか着地できる気はした。
ただ、その後で落ちれば怪我を回避するのは困難な気がした。
カンテまで止めれば行くしかない。

2回目の下部突破便、カンテへの一手が怖すぎ躊躇。降りる。
着地成功。
大丈夫そうだ。

下部突破3便目、カンテ出し前の体制調整でバランスを崩して落ちる。

その後暫く下部突破が出来なくなる。
完登への欲とヨレでメンタルが崩れてくる。

下部突破4便目、意を決してカンテ出しの一手を……。

成功。
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ここからは記憶がない。
難しいハイボールというのは、必然的に集中するものなのだと実感した。

一目惚れをしたその岩を発見したその瞬間の情熱を
忘れる前に登ることができた。

一目惚れした其れは、
私のこれまでの想像を遥かに越えたクライミングを行わせてくれた。

自身の想像と限界を越えたクライミング。
これはもう明らかに生涯最高のクライミングであったと言える。

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ニライカナイ V12

生涯最高のクライミング、
それは生涯最高の課題を産んだ。

私にとってのこれ以上のクライミングをする機会、それはもしかしたらまだあるかもしれない。
ただ、正直、今後これ以上の課題は残せる気がしない。

そんなニライカナイのあるビックマンタの岩。
幸いこの岩は国有林に存在する。

興味ある人が居れば案内したい。

〜後になって思う事
生涯最高のクライミングが、まさかグランドアップで成し遂げれないとは…。
それを想うと、もう少し進化は出来そうな気はする。