「ヨダカ」カテゴリーアーカイブ

ラプソディ

ゾウネルラLowProject。
昨年秋にスタンドで登れ、下部も淀みなくできる。

本来ならここで勝負をかけるところだが、今季の最優先は公開迫るヒスイのproject。春にまわした。


山深いよだかの森。雪は溶け日ももう長い。

3月6日

よだかの森を歩く。いつもならシャクシャクと枯葉が鳴るのだけど、今日はぬかるみ地面がジュクジュクと呻く。森は少し湿気ていた。

岩も少し黒い。
それでもゾウネルラの核心の一手は容易にとまった。

「いけるぞ」と意気込み下部をやる。すると全然ダメ。

右脚が疲れていた。思えば最近右ヒールが課題が多くダメージが残っていたのだろう。1月の怪我も響いていると思う。

できはするけど今日ではない、そんな感覚だった。
名残惜しいが機を改めることに。


日はまだ長い。
せっかくなのでエリア中腹にある船岩のprojectへ。
随分前に王手かかっていたが、えぐめのカチとリスキーな上部に怖気付き目を逸らしていた。

山を上がる。
相変わらず自然豊かな渓谷で、目に入る全てが美しい。

シーケンスを変えて少し恐怖が和らいだ。
カチを保持し続ける、昔なら選ばない選択肢。今季はカチ保持の調子が良い。


下部も以前より好感触、これは近々登れそうな気がする。
せっかくなので日没まで本気で攻める。

辺りが暗くなりはじめた頃、登ることに成功した。

ラプソディ v12

まさか登れると思っていなかった。少し呆気にとられたがそんなものなのかもしれない。できる時にはできる。

余韻に浸る間もなく闇が迫る、森も深く夜が近い。
すぐに下山を開始した。

思わぬ成果があったもののゾウネルラは何も進展していない。
暑くなる前にチャンスがあればもう一度対峙したい。

 

くる年へ繋ぐ12月

2022年は、思うよう良い岩が登れた。
気持ちにも余裕が出来たので12月は衝動に流されず難しい岩に絞ろうと決めた。

狙うは3本。

1.   ヒスイのルーフ(通称LEBproject)
2.    VV3.0project
3.    ゾウネルラproject

普段であればその時格好良いと思う岩を、その瞬間最大熱量で狙う。
その衝動的熱量を捨て限界値を。3本。

 


最初に狙いを定めたのは

3.ゾウネルラp (よだかの岩)

市蔵のスタートからカンパネルラにつなげるライン、ゾウネルラ。実は初秋にmoveを発見していた。

12月8日 スタンドで初登

新たなシーケンスの発見で当初よりやさしくなってしまったものの、「ここが通せたら凄いラインの可能性が広がるな」なんて感じていたブランクセクションの突破に成功。

となると後はルーフの付け根から繋げるだけだ。
なんて簡単に書いたが下部はv10。果たして繋がるのか。

ゾウネルラlow start project

12月半ば、雨上がりでの挑戦にも関わらずラスト一手までは攻めることができた。
このまま通い勝負をかけようかと思った。

 


その矢先、仲間から春にヒスイを公開したいと相談を受けた。
となると1月中にヒスイのprojectは登っておきたい。ゾウネルラlowは春でもできる。仲間の気持ちを汲み、ヒスイのルーフを優先することにした。

 


1、ヒスイのルーフ

果てしないルーフ。
二日ほど通い全ての動きが解析できた、同時に自動化も進む。ルーフの奥行きが身近なものとなった。

となると早めに勝負をかけたい。そんな気持ちと裏腹に雪が。山が白く覆われる。雪解けルーフは染み出し年内の完成は絶望的となった。
それでも通う。できるパートの自動化をはかる、来たる瞬間をより早く迎えるために。

湿気た山で終えた2022年の岩登り。
岩の上に立つことは叶わなかったけど、
ゆく年に悔いなく、くる年を期待を。

2023年1月へ。

 

動画 よだか開拓記10【ゾウネルラ】

シーラカンス

【過ぎゆくかたわらに】

小川を渡る。
綺麗な森をくぐり、小さな丘を上がる。
すると、陽の当たる心地良い広場が。

すぐ下には圧倒的な存在感を誇る巨石。
その脇にある「小さなハング」の記録。

【巨石から】

巨石にはすぐに課題ができた。

奥にも壮大な岩がいくつか在る。
通う日々。

春の終わり、「小さなハング」のカンテに夕陽が刺さる。その光景はとても美しく、いつかこの岩も登るんだろうな、なんて思いを巡らせた。

「ロマンティカ」と「澄哲星」

巨石達に決着がついたある日の夕方、
道中にある「小さなハング」をやる。

トライしながら思い出した。
私は別にハイボールが好きなわけではない。本当に好きなのは、地面から程よい高さにある超前傾の面登り。まさしくこれじゃないか。

熱が入っていくのを感じた。


【シーラカンス】

12月23日

前半戦、ハイパワーな初手ではじまり、繊細なシーケンスで手を進める。
後半戦、強固に決めたフックのつけを清算するところからはじまり、フルスパンの一手。ここさえ堪えきれば登りきりたいところだが、追い討ちにほんのり渋い2move。

起承転結、それぞれが濃ゆい。

昼前、最終局面の一手で落ちた。
どうなるかと思ったがその後のトライで登りきることができた。

「シーラカンス v12(四段)」

春に見た陽の刺さるカンテ、いつか夕陽のもとトライしようと思っていたが…
冬は一切陽が当たらない。
凍える森の底、遠くの山にあたる日差しが恋しかった。


【共に】

初冬、巨石たちを無事登りきったあとのこと、Kさん夫婦と一緒に登る機会があった。時期こそ違えど私以上にこのエリアに通い込んでいる二人。


一緒に過ごせて良かった。事前に掃除していただいた岩を案内いただきいくつか登る。その中の一本「傾奇者v9」はマニアックで面白い。二人に感謝。

 

澄哲星


美しきよだかの森の源となる清流。
そのせせらぎ深く感じれる石壁(中央)をAyaさんが初登、「星を捕る人」。
存在感抜群でエリアを代表する課題。2020年10月のこと。

特徴的で超弱点の凹角の脇、超強点となるカンテ。ずっと気になっていたが、あまりに威圧的で取り付けないまま良い季節が終わった。

次のシーズンまでに掃除だけはしておこうと決めてもなかなか出向けず。


2021年6月

気は重い、それでも一分の可能性を期待し向かう。

道中、地元の師から連絡があった。詳細は略すが、深く心に刺さる内容で酷く動揺した。
行くのをやめようかと思い何度も車を停めたが、結局行った。

私はこれまで自分勝手に岩を登ってきた。時に、無意味なことに本気になれるからこそ自身にとって大切なことだと言い聞かせた。
今日も自分勝手にデカ目な岩をやる(ボルダーとしては)。社会的に何の意味も為さないどころか怪我のリスクもある。今、私は何をやっているんだ。

岩はいつもよりデカく見えた。上にまわり込み掃除の準備。ロープに身を預ける際、何度も確認した。相当弱っていることを自覚した。

掃除を進める。私の精神に追い討ちをかけるかのよう、リップ手前の棚は悪かった。成ってはいそうだが、今の私の心を折るには十分な強度だった。

掃除を終え、下部を少しだけやり、岩から去った。

この後プラトーに陥り岩を休む。誰にも話せないまましばらく過ごした。


2021年9月

良い季節の前に一度対峙しておきたかったので、再訪。夏の豪雨で荒れていたので再整備。前より冷静に判断でき、ボルダーとして登りきれることがわかった。

核心はあくまで中間部。今はできる気がしなかったが、コンディション次第だと感じた。


今年、秋は来なかった。10月に入っても暑い日が続き、葉は紅く染まらず。11月半ば、いきなり寒くなる。葉が一気に落ちる、きっとあの岩にも陽が入る頃だ。

11月29日

初級者を連れ山を歩く。道は湿気ているが岩はどうか。目標を見上げた。どうも黒く見える。

取り付くまではかなり緊張した。果たして達しているのか…。
核心入り口のフラットな12mmアンダー、フリクション勝負だと思っていたが、今回はちゃんと効くのを感じた。少し安心。

最初のトライは、狙いにくいポケットをかすめて落ちたが問題ない。すぐ捕らえれることを感じた。
その後すぐにしっかりと捕らえた。あとは上部にてメンタル勝負、そう思っていたがそんなに上手くいかず。どうも中間部が上手くハマらない。予想外のポイントで苦戦し、集中を余儀なくされた。

あるトライ、無心で動き続けリップを保持していた。登れる準備をしていなかったので驚き振り返り同行者と目があう。登れたのだ。

澄哲星 v13

 

清流に寄り添う石、その凹角は誰が見ても最弱点最中央。
「星を捕る人」は完璧なラインである。

その脇のカンテライン。仄かな存在に似合わず、どこまでも真っ直ぐで合理的。ふと見上げればきっと魅力に気付かされるだろう。


昼ご飯を済ませ移動。
連れは岩を掃除し一本初登を決めた。

コニタン v2
初めての掃除で苦戦していたがそれも楽しそうで良かった。

私もやさしい課題を登ったりprojectをトライしたりと有意義な時間を過ごした。
17時には暗くなりはじめたので下山。

車に着いた頃には一面真っ暗、冬の訪れを感じた。
撤収。

 

6/21よだか(とりあえずp)

6月21日 よだかへ

この時期登っておきたい岩もあったが、疲労も溜まってきているのでこの日は案内メイン。昼前に栗崎と合流。エリア初来訪ということでメインの岩を紹介した。

初めて来た時に登った課題、evil hawk v8(初/二段)

さすがにパッとmoveを作ってすぐさま完登していた。にしてもやはりこの課題は素晴らしい。ほかいくつかやってもらいグレードやスタート位置について話し合った。

私はというと、そもそも登れるかどうかわからない明らかに難しいラインをやる。

市蔵のスタートからカンパネルラに繋げるバリエーション(ゾウネルラp)。ブランクセクションだと思っていた全然モテない形状。(写真右手)

この地特有の目の細かい岩質ならもしやフリクションで耐えれるのでは?

ずっとそんな気がしていたものの、もし登れるにせよ気温が10℃以下に落ちなければどうにもならないと思っていた。

気温20℃オーバーのなかとりあえずやってみる。すると思ったより形になった。もしかしたら可能性があるのかもしれない。下部がどうかは未知数だけど。。。

その後他のラインも取り付いたが可能性を感じられるものはなかった。

夕方、栗崎が帰ってからは舟岩のビグザム左をやる。

この岩を見上げて最初に思い描いたのはこのラインだった。

一見弱点に見える上部、実は非常に難解で当時は突破できず。結局途中から右に流れ完成したのがビグザム(v9▶︎改定v10)だ。

今回は上部解析に時間をあてた。ランディングが悪くリップへの一手が少し怖い。リップも極めてたるく、どうにもこうにもmoveが定まらない。

〜今日は夏至、日暮れまでの時間をフルに活かし何とか解析できた。その流れのままとりあえずスタンドで登りきる。上部だけでv10(三段)はあるように思うがコンディションが良くなればどうか?