ヘキセンシュス

決まって立ち寄る峡谷。
いつも湿気を帯びているけれど、そこは私にとっての楽園で魅力的な岩が無数に突き刺さっている。

7月22日

この日も山は湿気を帯びていた。岩登りは駄目だろう。森林浴でもしようと谷を降った。岩に対峙、いつも通り黒い。でも水滴はついていなかった。久々に取り付けるかもしれない。


昼過ぎ、トライできるまでに回復した。もちろんコンディションは良くない。
やりたかった岩の大半がダメだったけれど、多少ホールドがポジティブな水際のハングは辛うじて。

えぐみのある2本指ポケットで離陸し遠い大穴目掛けてとぶ。
初めは離陸すらギリギリだった。なんとか身体が浮き出した頃にポッケ中の水晶が吹っ飛び落胆するということを何度か繰り返した。

半日夢中でやり続け、身体が馴染んだのか岩が乾いてきたのか、よくわからないけれど登りきることが出来た。

ー Hexenschuss:ヘキセンシュス ー

たかだか一手。
その一手に夢中で昼食も忘れてただただ岩にへばりついていた。

濡れていた上部のスラブで立ち眩みがし、初めて朝から何も食べていないことに気づいた。

*
岩から降りて腹に行動食を打ち込み、気持ちきれぬまま対岸の岩の可能性を見た。

*

15時過ぎ、まだ陽は沈む気配はなかったけれど流石に行動限界。
せせらぎの横、のんびり英気を養った。

味噌とお粥が染みた。

 

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