「鶴見岳★★2002」カテゴリーアーカイブ

常盤

2月、4連休が取れた。
どこかに行こうとも考えたが、イマイチピンとこない。
ということで、もう一度絶望岩と真剣に向き合うことに。
全く手応えを感じない今抱えているメインのprojectから逃げたいという気持ちも強かったのかもしれない。

〜絶望岩、それは一旦解決した。
18歳の頃よりトップアウトに憧れ、力の実る32歳までにやることを決め、2014年無事成功させたエトピリカというライン。
ただこの課題には続きがあった。

トップアウトしたものの、それはハングからは大きく逸れ、しかも背伸びでスタート。

18歳当時、見上げた時はこのラインしか見えなかったのだ。
エトピリカを登った時、カンテに逃げずハングを直登するラインが見えた。
ただそれはホールドと思われる地点を繋ぐと1手1手の距離がとても遠く、失敗したら大幅に振ら落ちる。
激しすぎるランディング…上部で落ちたとき、着地に成功する自信は全くない。

無意識に、次世代のラインだと諦めていた。

そもそも私の目標は達成されたので満足していたのだ。

2/13 4連休に入る前に可能性を予め偵察する事に。
天気は雨。
ホールドは見事に濡れていた。

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どうにもならないので作業、リップに回り込み上部を確認。
根と土を退かす。ここでホールドが悪ければ絶望的。
繋がるであろう真上にはホールドがなかった。
これで諦めはついたがどうせすることも無かったので、作業継続。
カンテと離れた右側に掛かるポイントを見つけた。
こいつを一回抑えれば、リップ奥のガバが狙えるかもしれない。
可能性があることはわかった。

とはいえ、ハング最後のホールドからは距離があり、さらには危険ポイントに突っ込むmoveとなるので気は進まない。とりあえず、連休は直登ではなくエトピリカのsdsをやることにした。

2/18 連休初日
雪解けでコンディションが心配されたが、かろうじてトライ出来る状態ではあった。
ただ氷柱が溶けた染み出しで下部はあまりコンディションが良くない。

とりあえず触りでハングのダイレクトをやってみることに。

エトピリカから、ハング中央にあるホールドを狙う。掛はどんなものなのか…。
数便で、足を残そうとしていては届かないことが分かった。
翌便からは足をきって狙う事に。
着地に慣れてきたところで捉える事に成功。
リップの例の掛かるポイントは…
足がシビアすぎ万が一のスリップが恐ろしく、思い切り行かざるえない距離であった。

とはいえ届くと判断。
カメラをまわし、仕留めに行く。

無事リップを捉えた。
少しだけマントルが悪かったが無事に完登。

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まさかこのハング直登を自ら初登するとは思わなかった。
こいつに出逢ってから、完登のイメージを抱いた事などなかったのでイマイチ実感がわかない。

頭の中にある絶望岩ではないものを登った気分。
納得というより消化できないまま、sdsのmoveを作る事にした。
ただ下部はまだ湿気ている。
中間部でのチョークアップは必須であった。
下部の強度は比較的強く、がっつり短強いボルダーチックな内容。
ガバなどないダメージを受け継ぐトラバースを経由しそのままダイレクトに入る。

回復出来ぬままのリスキーでダイナミックな2手は完全にメンタル勝負であった。

夕方まで攻めたが幾度も手が出せぬまま降り続ける事を繰り返し、この日を諦めた。
ただ、翌日は雨予報。
準備し直して来ることを決め撤収。

その日の夜、数分おきに天気予報をチェック。
その際、登りたいんだ という気持ちに気付いた。
そりゃそうであろう。
思い焦がれた岩の完璧なラインに王手がかかっているのだ。

漸くその意味が実感したその瞬間から突然緊張し始めた。
寝つきに悪いまま夜を過ごす。

2/19 早朝よりエリアに入る。
想定外の出来事が。

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氷柱が溶け、さらに染み出している。
下部はキーホールドの二つが壊滅的。
予報は午後から雨。
レーダーをチェックし直すと12:00までは何とか持つことが分かった。

ギリギリまで乾きを待つ事にし、その機に登ることを決めた。

上部で感覚を研ぎ澄ますために柔らかいシューズ、左はvxiを選定。
下部の右フックは濡れたコンディションのなかでも成功したvsを。

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時が経つにつれ、乾いてくる。
ただどうしても乾きそうにない箇所があったのでmoveを作り直す。
乾いているholdで何とかなる事が分かった。
これで準備完了。
強度はv12程度、条件は、ラスト2手で絶対安定体制を残せる余力を残す事。

今日はまだほぼフレッシュ、機さえ逃さねば登れる。
メンタル勝負。

12:00 まだ太陽は見える。
回復を待つ。

13:00 一面雲で覆われた。
やる事に。一登。

練習の成果、下部は完璧、チョークアップまで計算通り。
上部、何度やっても一手出す前は躊躇する。
3度までの躊躇をイメージしていたので3度目で飛び出し成功。

リップ取りmoveを変えており、力が残っていれば成功するシーケンスを。
もちろん残っている。

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完登。

絶望岩で最も強烈なラインが完成した。
そして私にとっても過去最高のクライミングが出来た。

プラスティッククライマーと呼ばれた過去、現に今でも傾斜のある面一のクライミングが得意な私のスタイルにもぴったり、そして環境は岩場の経験値を要求される、これまでの集大を成す機会を突然得た。

これ以上に難しい課題も残してきたが、こいつ程衝撃的な課題は過去に存在しない。
この課題は、今後是非とも多くの人にやってもらいたい。

それは幾年も先のクライマー達にも…。

名を 常盤 とする。
大分最大のデパートTokiwaからであるが、あえて不変な岩という意味の 常盤 という字を使わせて貰う。
グレードはv12。

雨が降るまで余韻に浸ろうと思ったが、1時間経っても降ってこない。
諦めて帰る。

随分高いところにある雲を見て、少し勿体なくなり、
高原で日暮れまで登って撤収。

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動画は常盤とゆふ山麓のボルダー。

大分帰省

8/16 深夜、実家に帰省。眠そうなハナの出迎えを受けた。
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8/17
朝それなりに早い時間に起床し、用事を済ませる。
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昼過ぎよりなんとか時間が出来たので岩へ。
とりあえず鶴見岳に向かうも、生憎の悪天でコンディションは最悪。
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さらに、狙っていたラインは蝙蝠の巣になっていた。

登れそうな岩もあったが、次回への可能性を繋ぐために他のエリアを偵察することにした。
次は由布山麓のボルダー。

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相変わらず心地いい。
小雨はぱらついていたが、とりあえず登れそうなので取り付くことに。

この岩は10代の頃からへばりついてきたが、どうしても中央突破が出来ない。
結果からすると、この日もいつもと何ら変わらなかった。
以前見えなかったホールドが取り付きから見えたので、道具を運びいざ挑戦するも、そのホールドは体重をかけるまでもなく崩れていった。
そしてホールドは消えた。また降り出し。

ただ、以前はそんなところにホールドがあるなんて気づきもしなかっただろうから(気づいていたらそのホールドはとっくになくなっている。)一応は進展。
バリエーションに30分程度取り付いて、この日は終わり。

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8/18
昼前より佐賀関のボルダーへ。
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高校時代の記憶と写真を頼りに、岩を探す。
親に聞いても、場所がイマイチわからない。
記憶の断片として小黒という単語が残っていたので、iPhoneで探し小黒に位置する黒ヶ浜を見つけた。

とりあえず佐賀関の街並みを抜ける。
そこからは早かった。
記憶というものは時に優秀で、道筋選定は何故か自動化されていた。

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迷うことなく目的の岩に到着。
頭の中にあったその岩は3m程度のちょこっとした岩だったが、実際に目の前にして少し驚いた。
それなりな岩である。

高校時代のお遊びは、一応ボルダリングの範疇であったようだ。

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ちゃちゃっと終わらせる予定できたこの岩。
想定より立派で想定よりはるかに悪い。
挙句少し脆い。

upで過去の課題や新しいラインを数本登り、おいしいラインに取り付くも幾度となく欠け、シーケンスが安定しない。
人を待たせているので焦る。
かろうじて固まった頃にはすでにup開始から30分が過ぎていた。

変なプレッシャーを感じ繋げ1便目は落ちたが、2便目できっちり仕留めることができた。
黒ヶ浜の転がる黒い石ころと、この好天、そして無限に広がる美しい海を想い、
名を 浜黒き果て青し とする。

映像はyoutubeにあげている。

夕方、少し仮眠し夜登りに行こうと思っていたが、タッシーが来ていると連絡があり待望のkwallへ。
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最近結構な頻度でタッシーと登っている気がする。刺激的でありがたい。
片島さんとも開拓の話ができて本当に充実。
そしてなにより、オリジナルホールドが面白い。シンプルながら初見で力をセーブしにくい…。
課題も、テイストが幾つかあって面白かった。
〜短時間ながらオーバーワーク寸前という新鮮な体験をさせてもらいました。。お世話になりやしたー!

8/19 相変わらずハナに踏んづけられ起こされる朝。
2階に上がってくる柴犬てどうなんだ。

もはや室内犬となっているハナの切ないお見送りを受け出発。
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この日、本格的にprojectを狙う予定出会ったがまたもや雨。
時間を持て余すこととなったので、facebook仲間のアースに登りに。

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壁が進化していた!
初心者さん方が入っていて、ほっこり、のんびりさせてもらいました。

体制整えたところで、久留米まで一気にドライブ。
夜は店番。

バルスパズルv12と煩いの虎v10

ブログが溜まりすぎとる…。
いくつかの岩は省略して、まとめて2課題消化。

12/18
ハードなセットが続く週…
岩に行けない日々、
無性に難しい課題がやりたくなった。

スケールや質はもう関係なく、ただただ激しいmoveがあり、かつ登れる可能性のあるライン。

ぽ城を選んだ。
トップアウトはできないが、内容は面白く、さらにはパズル要素が非常に強いprojectがある。
10月に二日費やし、パズルのピーズはもう見つけていたので、あとは0から当てはめていくだけだ。

気温は2度。
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林道の脇には雪が残り、
岩には氷柱が下がる。

その光景に心踊る。
何て素晴らしいコンディションなのだ。

適当にアップを済ませ、早速取り付く。
まずはmoveの確認、感触は非常に良い。

繋げに入る。

流石に二日間のトライで撃破出来ていないだけあって、
すんなりとはいかなかった。

v10のパートである前半で何度か落ち、
中盤の核心でもちゃんと落ちた。

その都度細かな修正を入れ、
1時間程度で無事完登。

複雑なシーケンス、解決するまでの二日間はとても楽しかったし、
繋げの本日もストレスなく打てた。

バルスパズルv12

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12/22
実家に帰省。
僅か1時間だけ空き調達。
とりあえず最寄りの鶴見岳へ。

1時間できっちり登れる課題…
生涯の課題、絶望岩エトピリカのついでに開始した煩いハングのバリエーションを仕留める事にした。

左カンテから取り付き、煩いv5にリンクするバリエーション。
この課題は流石にクオリティは低い。
ただ難しいだけの課題である。
(バルスパズルは案外スケールあるし写真動画で見るよりはるかに面白い)

適当にアップをして核心を確認、
さっくり出来た。

身体は温まっていないが、繋げに入る。
流石に核心で何度か落ちたが、予定通り30分程度で片付いた。

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煩いの虎v10

…何故この課題に3日もかかったのだろう……。
と、動画を編集していて思い出した。
トライ二日目の後半までアホみたいなmoveでやり続けたからだ…。

登れてからは、少し早いが撤収した。

バルスパズルv12、煩いの虎v10の動画

前傾した強度の強い課題が二本続いたからか、
翌週、スケール感のある爽快な課題がやりたい衝動に駆られることとなった…。

絶望岩シーズン初日、二日目

2014年11月
今年初となる絶望岩のトライ。
(13年分の経過は一つ前の記事参照)

久々のトライ、決意までのラストシーズンなので負荷の確認が目標。あわよくばmoveをばらすこと。

後半は昨年バラした。
今回は核心部の確認。
どうしても繋がらない手順。

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(写真は昨年のトライ動画から)
このクロスが出来ればバラした後半のmoveに繋がるのだが…
一時間打ち込みの末、不可能だと分かった。

フックを解除し、足を送ってからクロスを試し見ることに。
いざ、トライ。すると最中に全く別のシーケンスが閃いた。moveを起こそうとするが怖すぎて一旦降りる。

核心部の可能性が見えた。

上部のシーケンスも影響しそうなので、一旦上部を組立て直す。
上手く辻褄があった。

後はもう、核心の足送りからの一手をバラすことに集中。
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一度だけ足送りに成功したが、次の一手が捨て身になった。
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あえなく落ちる。
修正すべき点は明らかで、足を送った際の踏み込みが甘かった。それが修正できれば手が出せる。
はっきりと分かっていた…
しかしその後、足送りが一度も成功せずに時間切れ……。

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ロープウェイの最後の便が着いたら、駐車場のゲートが閉まる。
その最後の便を駐車場で眺めているその瞬間、何処にもぶつけようのない、とてつもなく悔しい気持ちになった。

敗退。

エリアから20分の位置にある実家に泊まり、翌朝再びトライすることを決める。
この時はまだ疲労などあるなんて、思いもしなかった。

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眠そうな犬の声で起きようとするが、一瞬戸惑った。
筋疲労で起き上がれない…。
早朝からいきなり凹むことになった。

それでも、やるべき事に集中すべく、朝のルーチンをこなし、岩場へと向かう。

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数年前の水害の後、造られた砂防ダムの周辺ももう落ち着いた。それ程長い間、ここに来続けているのだろう。
あとどれくらい通うことになるんだろうか。

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私はこのエリアの木漏れ陽がとても好きだ。

アップを済ませ集中する。体力的に長くはトライできない。
数便でmoveを解決することを目標とする。
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ここまで集中したのは初めてかもしれない。

1便目は普通に足送りで失敗。

2便目、足送りに成功した。
昨日の教訓を活かし、共に3年を過ごしたTeam510をねじ込む。
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そして解決していない一手出し、上手く捉えた。
後半部はよく覚えていないがとりあえず上手くいったようで、
気づけば岩の上に座っていた。
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完登。
座ったまま、暫く湧き上がる感情を待ってみたが…
「何も感じない…」
そう分かってからは、すぐに取り付きに降りた。

たんたんと、荷物を片付け、山を上がり、こないだ消化し損ねたprojectをやるが全く出来ず一便でやめる。
生涯の目標が終わった。
もう別に難しい課題を攻める練習をしなくてもいいし、トレーニングもやめていいんだ。

気持ちが切れた。

すぐに帰り支度をし、
山を下る。

必ず通る絶望岩を通り過ぎる。

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背に、
木漏れ陽のあたる絶望岩を感じた。
振り向くと、
それはとても美しく
その瞬間、涙がこみ上げてきた。

さようなら、
生涯の目標よ。

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帰り、目をつけていた高原のボルダーに寄ったが景色を眺めただけで一度も靴を履くことなく終わった。
本当に気持ちの良い場所だ。

〜絶望岩、名を エトピリカ とする。
由来は前の記事に書いた通りエンディングである。

今回のラインはあくまでエスケープラインでありもっと素晴らしい課題は出来るであろう。

ただ、それらを完成させる気力は今の私に無い。この岩を初めて見上げた時の絶望感、そしてかすかな希望を現実のものにできただけで満足である。

すべての事象に感謝したい。