たるいカチから右のエグいカチにランジするprojectがあった。
正直私はカチが嫌いだ、そして苦手だ。
moveが面白そうなだけに残念な気持ちを持ちつつ放置していた。
2014年3月、それは二日間の濃厚な時間の末、室井登喜男氏により解決。
はじまりの記憶v10という課題となる。
短い期間の中で初登まで持っていく氏の姿をそばで見て、感動した。
その次の秋に私も登った。
ただ、その時はその完全体であるシットスタートprojectなんて全くイメージ出来るものではなかった。
何せ核心部のランジはひたすら飛んで成功させたのだから、下部でダメージを受けてからなど…。
…さらに核心後に落ちる可能性の増すダイレクトアップなんてトライする気すら起きなかった。
2015年、放置しているprojectにカチの絡む課題が増えてきた事に危機感を抱きはじめる。
そこで今期はカチのメニューを入れる事にした。
冬、数値も増し、無事に幾つかのprojectを終えた。
2016年春前、メインのprojectの止まらなくなったスローパーを眺め、今期断念することを決めた。
上りゆく気温を言い訳に。。。
では、次に何をするか考えて…
真っ先に出てきたのが、はじまりの記憶の完全体であった。
3月9日 トライ前日、一応カチの数値をとってみることに。
見事に下がっていた…岩に行きすぎてサボっていたせいであろう。
とはいえ、2014年よりは遥かにましだ。
3月10日 不安を持ちつつトライすることに。
アップでランジ体制を確認、思いの外感触は良い。
たまたま寒気が味方してくれたのが良かった。
数便でランジはとまった、ただ予想外に核心後の右トラバースが悪く、まさかの落下。
リピートトライで舐めてただけかと思ったが、隣のラインから確認。やはり悪い。手順をちゃんと固める。
翌便、無事repeat。
核心の精度が今日は非常に良い。
完全体を狙うことにした、隣のラインから上部のホールドチェック。
ガバの位置を覚えた。
ダイレクトの上部は、過去地ジャンスタートで登っている。
そのパートの核心はランジで、v6程度。
数度地ジャンでトライしたが失敗。指皮の消耗が激しい。
感触はつかめたのでそこでやめ、lowの部分を確認。ここは完璧。
しっかり休み、繋げる。
するとやはりはじまりの記憶の核心、カチランジで落ちる。
何度やってもとまらない。
下から来るとわずかに足順が変わる。
大した違いだと思ってなかったが、よくよく考えたら重心が下がる。
無理やり調整し、足順をスタンド時に合わせることにした。
次の便で、カチランジ成功。
ダイレクトアップを目指す。
手順を合わせるための右手5mmのミニデットがかなり怖い、が無事成功。
手順を入れ替え上部突入。
手順合わせに成功したら足が残せることはわかっていたので無事突破。
短いが長く感じるクライミングを終えた。
琥珀 v12 とする。
はじまりの記憶
はじまりの森と名付けたこのエリア、
そのエピソードを室井さんに話したことでこの課題名になったと解釈している。
〜
狙う氏の姿、
この岩の前の張り詰めた空間に佇むその情景が、今でも鮮明に思い出される。
それこそが私とこのラインの、はじまりの記憶。
終焉したこの先も、この課題と想いを閉じ込めて残れせれば…
そんな意味を込め、名を琥珀とした。