「由布山麓」カテゴリーアーカイブ

由布岳【飯盛ヶ城の塔】

ずっと行きたい場所があった。
はるか遠く丘の向こうに見える岩群。
果たしてどんな光景が広がっているのか…。


【経緯】

由布岳の岩を登りはじめたのは18歳の頃。麓に点在する良質な岩たち。岩質的にホールドが乏しくどの岩も解決まで時間が掛かる。中には未だ登れる気配のないものもあり、実家に帰る度に通い続けている。

ある日、とある山行記録の写真を見た。

そしてすぐにピンときた、遠くに見えてるあの岩だ。写真で見たその岩は、想像していたよりずっと良さそうに見えた。行こうと決意する、がそのまま数年。

いつまで経っても行かないまま。なぜ気持ちがのらないのか?……それは……どう考えても遠い。しかもその日一日満足できる保証がない。大昔、その手前の崖にボルダーを探しに行った際30分以上かかった。となると目的の岩まではどう見積もっても倍は掛かる。足が向かない。


【決行】

とある日、秋に二日間時間がとれそうだと話す親友。せっかくなので何か面白いことをしようと考え、真っ先に頭をよぎったのがこの岩群だった。全然登れない岩だったとしても二人ならきっと楽しい。意を決した。

11月15日
ロープとマット、開拓ギア一式を車に詰め込みいざ由布岳へ。現地駐車場にて地元のクライマー親子と合流。もともと二人で行く予定だったが急遽参加が決まった。旅は道連れ。

ちなみに今回の目的地、地点情報を調べる過程で知ったのだが、1970年代から今尚も登られているゲレンデとのことで。となるとトップロープ用の支点はとれると予測。ロープを運ぶことを決めた。

いざ行かん。


【登山】

数年前、肩より高く生茂った薮の中を進み辛うじてたどり着いた谷の岩。当時は30分以上かかったが、今は砂防ダム工事のためのコンクリート道が出来ており、10分そこらで着いた。

このままいけば30分程度で着くかと思われたが、丘を登り詰めたところでコンクリート道は大きく湾曲。岩の位置はわかっているので、道を無視しこのまま丘沿いを歩こうとも思ったが、今回は安全をとり道に従い西登山道への合流を目指した。

登山道に合流、高原の先に岩が見えた。歩を進める。

登山開始から約45分、岩の前に到着。


【飯盛ヶ城の塔】

広大な高原、見上げれば豊後富士、見下ろせば湯布院の街並み。これだけで十分すぎる。

思えば、西登山道を歩く登山者たちもこの開放的な空間を楽しみに選んだ人らも多いのではないだろうか。私らの目的はあくまで岩登り、何て贅沢なんだ。

アプローチでの疲れが癒えたところで岩を見周る。

トップロープ用のメインゲレンデとなっている一番でかい岩壁はガチャガチャしていて少し易しい。スニーカーで一本登り満足。

次にその脇の岩塔。写真を見て一番気になっていた岩だ。見上げる、どう考えてもでかい。そして若干の脆さを感じた。

諦めてトップロープでやることに。岩の上にまわりこみ愕然とする。支点がない。メインゲレンデはカットアンカーがあったのに…。ようやく見つけたのは、かなり奥まった位置にある腐ったリングボルト3本と細い木。

スリング総動員でリップの岩角まで伸ばし、何とかロープを張った。動荷重はかけたくない。

まずは掃除、吹っ飛びそうなホールドは全て無視。硬そうなホールドだけチョークをつけた。
各々トップロープで恐る恐る登る。難易度自体はそこまでない。

さて本番。ボルダーというよりフリーソロだが、オンサイトでもないしリハーサルでもテンション入れる要素は0。吹っ飛びそうなものはマークしてるのでビビりつつ快適に登る。

もしこれがリードルートならとても素晴らしいものだっただろう。散らばるポケットの位置が絶妙、随所でポジショニングを要求される。とてもクライミング的で良かった。


【ボルダー】

写真に映り込んでいた被ったボルダー。こちらが本来の主目的だったが、実際は登る価値もないような岩だった。

昼飯がてら参考にした山行記録の写真を見返す。左奥に被った岩が映り込んでいた。見に行くことに。手頃なハング。わざわざこれだけをやるためにギアを運ぶほどでもないのでスニーカーで初登を決めておいた。ダイナミックな動きが心地良い。

結果からしてボルダー自体はイマイチだった。


【下山】

下山がてら道中の岩を登る。いくつかやったがどれもリップ付近が脆く土も溜まっていたのでマントルを返せる場所が少ない。それでもそれなりに遊べたのでよかった。


そのうちちゃんと掃除したいと思うがまた来るのだろうか?来るだろう、実家からは相当近い。

少しだけ満たされた気分でコンクリート道を歩く。


【夕焼けの塚原から】
あまりクライミングにならなかった申し訳なさを抱きつつ地元家族と別れ、移動。

日暮れまでまだ時間はある、ならばこれでしょと。

山の向こうに沈みゆく太陽の光を受け一面オレンジ色の高原。そこに佇む巨大なハング。


岩を見に行くとだけ伝え誘い出したが、何を感じたのかシューズを持ってついてきていた。

日暮れ寸前で二人とも登れ、暗闇に染まりゆく中車に戻る。良い1日だった。

湯布院へ。
そう、今日はこのままコテージ泊まりなのだ。スーパーで買い出しを済ませ温泉に入り酒を飲む。

タック様、運転もご飯もありがとうありがとうとても感謝しております。
飲んだくれて一日終了、2日目に続く。いや続かない(2日目はグダグダすぎ店番ギリギリで続きの話は略)

 

由布岳東 monsterとトポ

約1年半前(2020年1月)、二日酔いのなかフラフラしながら見上げたmonster face。
知人からもらった写真では4m程に見えたが、実際は7-8m。このコンディションでやるには少しやり過ぎ感のある巨石。

右のライン。壁中、凹凸がはっきりとあり明らかに登れるがあまり綺麗ではない。上部の怪獣の顔に見える部分の右眼(大穴)に向かう。

濁眼 v4(2級)

左のライン。綺麗な壁に細いクラックが左上、周囲に良い感じのホールドが。こちらは弱点に沿って登る美しいライン。

雷の子 v6(1級)

右左2本のラインが出来た。さて中央は?
出来そうな出来なさそうな、途中結局右か左に流れそうな。読みきれない。どちらにせよリスクがありそうなのでこの日はトライをせず。

 

2021年7月12日

暑い日が続く。こんな時は高所へ、そうだ由布岳へと。前回取り付けなかった中央の道筋をやりに向かう。

二日酔いの身体では重く遠く感じたアプローチも、快適なハイキングであった。久々に見上げると相変わらずでかい。

中央は果たしてライン成立しているのか?見上げる限りホールドはよくわからず。

昼過ぎ、いざ着手。と思った瞬間に小雨。山の天気は変わりやすい。やばい。

フェイス中央の目立つホールドから取り付く。程よくギリギリ届く位置にポケットが続く。右に左に壁を大きく使いながら進む。その上で、隣接するラインとは干渉しない。

良いラインじゃないか。

後半パート、モンスターの顔の部分はやや脆く感じたが慎重に進めば問題ない。

雨粒大きくなる前に登りきることができた。

Monster

雨が酷くなる、鶴見岳の方からは雷鳴が。まだ時間はあったが撤収することにした。

アクセス

岩は脆く最新の注意が必要。

 

由布岳東口の岩

1月20日

大分の打ち上げの翌日、安定の二日酔いで昼過ぎまで動けなかった。
元々今季最大目標に対峙する予定だったが体調的に無理。

ということで身近で手頃な岩をやる事に。

故郷で過ごした日々の中で通い詰めた由布岳へ。東口に最近良さげな岩があると聞いた。

歩いて15分程との事。かつて歩いたはずだが記憶にない。改めて見に行くことに。
当時登ったいくつかの岩を横目に歩き続ける。

丁度15分で岩に着いた。手頃な岩と聞いたのだが…。

全然手頃ではなかった。でかい、というかデカ過ぎる。

上にまわるもリングボルト一切なし。周辺のエリアは3mをこえると大体ボルトが打たれているのだが…一番高いところで7mはあるだろう、奇跡か?

ワクワク、と同時にフラフラ。登りたいという欲求と同時に二日酔いを再確認。久々に迷った。これをやるコンディションではない…。
とりあえず左右の脇を3ー4本登る。

酔いが覚めてきた気がした。

やろうと!
一番良さげな左のクラックをやる。

最高だった。でかい岩に割れ目に沿った顕著なライン、しかも大きな動きがリップまで続く。それなりにびびったが何とかなった。

雷ノ子
グレードはv4〜7のどこかだと思う。若干脆いがかなり良い道筋だと思う。v7が安全に登れるクライマーならかなり充実したクライミングが出来るだろう。

少し登り足りなかったので右も登って撤収。

濁眼 v4〜5
岩の正面を顔として右眼に向かって登っていく。

二日酔いではじまった一日であったが、結果的に充実したクライミングができた。由布岳の自然を満喫しつつ帰路へ。

由布岳 Hanna

11月12日
前日は地元の旧友と別府で飲み。ということで実家速見で目が覚めた。

夕方久留米の戻る予定にしていたので、最寄りの由布岳へ。高校時代から登っていた通称カーブエリアで登る。

ロケーションは相変わらず良い。むしろ良すぎて怖い。広大な自然の中に身を置くと、自身のちっぽけさを体感。そしてボルダリングという行為のリスクについて考えてしまう。

10代の頃、考えられる様々なラインを片っ端から登り、さらには帰省で訪れるたびにロースタートやトラバースなどのバリエーションも追加。

それでも正面だけはダメだった。
そもそも当時、正面にラインが引けるなど思ってもいなかった。

春、正面を見上げる。左のカンテを上手く使えたらラインになるように思えた。
初期に登った左カンテライン「久遠ノ美」の想い入れが強すぎ、左カンテを利用するという発想が完全に抜けていた。

その日の夜、地ジャンスタートで完成させる。
地ジャンせずとも離陸できるホールドはあるが、そこから地ジャン先のホールドまでが繋がらず。その日、仕方なく地ジャンで登ったというのが正確。

今日はそこを重点的に探ってみることに。

離陸は問題無い。実は過去何度か試したことがあったが、当時は離陸すら厳しかった。

離陸後、初手が遠く感じる。左手のホールド以外、全てが悪い。しかも次の一手は左手だ。明瞭なフットホールドがない分イマイチ形を決めきれず。
色々探っているうちに初手が届いた。良いポジションを発見!

moveは決まった。こうなればこっちのもんだ。上部は前回登っているのでプレッシャーはない(高さによるプレッシャーはもちろんあるが、成功しないのではないか?という不安からくるプレッシャーは消えた。)

気持ちを込めて、初手をとめ、登りきることができた。

Hanna 初登

見上げてからが長すぎて、正直グレードはわからない。岩とロケーションは最高、それは間違いない。
岩の上で見た湯布院の町がとても美しく

長らく愛した岩がまたひとつ終わった。