2014年11月
今年初となる絶望岩のトライ。
(13年分の経過は一つ前の記事参照)
久々のトライ、決意までのラストシーズンなので負荷の確認が目標。あわよくばmoveをばらすこと。
後半は昨年バラした。
今回は核心部の確認。
どうしても繋がらない手順。
(写真は昨年のトライ動画から)
このクロスが出来ればバラした後半のmoveに繋がるのだが…
一時間打ち込みの末、不可能だと分かった。
フックを解除し、足を送ってからクロスを試し見ることに。
いざ、トライ。すると最中に全く別のシーケンスが閃いた。moveを起こそうとするが怖すぎて一旦降りる。
核心部の可能性が見えた。
上部のシーケンスも影響しそうなので、一旦上部を組立て直す。
上手く辻褄があった。
あえなく落ちる。
修正すべき点は明らかで、足を送った際の踏み込みが甘かった。それが修正できれば手が出せる。
はっきりと分かっていた…
しかしその後、足送りが一度も成功せずに時間切れ……。
ロープウェイの最後の便が着いたら、駐車場のゲートが閉まる。
その最後の便を駐車場で眺めているその瞬間、何処にもぶつけようのない、とてつもなく悔しい気持ちになった。
敗退。
エリアから20分の位置にある実家に泊まり、翌朝再びトライすることを決める。
この時はまだ疲労などあるなんて、思いもしなかった。
眠そうな犬の声で起きようとするが、一瞬戸惑った。
筋疲労で起き上がれない…。
早朝からいきなり凹むことになった。
それでも、やるべき事に集中すべく、朝のルーチンをこなし、岩場へと向かう。
数年前の水害の後、造られた砂防ダムの周辺ももう落ち着いた。それ程長い間、ここに来続けているのだろう。
あとどれくらい通うことになるんだろうか。
私はこのエリアの木漏れ陽がとても好きだ。
アップを済ませ集中する。体力的に長くはトライできない。
数便でmoveを解決することを目標とする。
ここまで集中したのは初めてかもしれない。
1便目は普通に足送りで失敗。
2便目、足送りに成功した。
昨日の教訓を活かし、共に3年を過ごしたTeam510をねじ込む。
そして解決していない一手出し、上手く捉えた。
後半部はよく覚えていないがとりあえず上手くいったようで、
気づけば岩の上に座っていた。
完登。
座ったまま、暫く湧き上がる感情を待ってみたが…
「何も感じない…」
そう分かってからは、すぐに取り付きに降りた。
たんたんと、荷物を片付け、山を上がり、こないだ消化し損ねたprojectをやるが全く出来ず一便でやめる。
生涯の目標が終わった。
もう別に難しい課題を攻める練習をしなくてもいいし、トレーニングもやめていいんだ。
気持ちが切れた。
すぐに帰り支度をし、
山を下る。
必ず通る絶望岩を通り過ぎる。
背に、
木漏れ陽のあたる絶望岩を感じた。
振り向くと、
それはとても美しく
その瞬間、涙がこみ上げてきた。
さようなら、
生涯の目標よ。
帰り、目をつけていた高原のボルダーに寄ったが景色を眺めただけで一度も靴を履くことなく終わった。
本当に気持ちの良い場所だ。
〜絶望岩、名を エトピリカ とする。
由来は前の記事に書いた通りエンディングである。
今回のラインはあくまでエスケープラインでありもっと素晴らしい課題は出来るであろう。
ただ、それらを完成させる気力は今の私に無い。この岩を初めて見上げた時の絶望感、そしてかすかな希望を現実のものにできただけで満足である。
すべての事象に感謝したい。