「ヒスイエリア2023★★」カテゴリーアーカイブ

続く碧の道

碧の谷風そよぐ道。

岩探しの先駆者、故・野下善秋氏
氏の残した岩に続くを辿り広げてきた。それももうじき終着する。

残された道標を頼りに進んできたけれど、
どうしても辿り着けない岩があった。

2020年、とうとう若手が辿り着く。
激しく荒れた林道の先、私一人では絶対に辿り着かなかった。

ずっと探していた岩。すぐにでも登りたかったが導かれたのは私ではない。発見したのは先の世代、そんな彼らに託そうと決めた。私が辿り着かなかったのは、そういうことなのだろう。


岩のある山のすぐ下で農作業に励む地元の方々、
時折出会う地権者の猟師さん、
信仰のある山の麓の宮司さん、

関わる全ての人へ説明しつつ岩の整備を進めた。


2023年1月

とうとうメインの岩を栗崎が登った。


[瑠璃ノ坏]

栗崎だけではなくボブも、翡翠の岩や瑪瑙の岩の良質なラインを丁寧に登っている。
二人により周囲はボルダリングエリアに近づきつつあった。

2022年2月

公開に向け地元の方々に挨拶。
みんな笑顔で迎えてくれた。
きっと二人が上手くやってきたのだろう。

継承する者らもしっかり先を見据え道を守り進んでいる。
来たる終着点の先は…

碧の谷風そよぐ道。

ー記実ー
未開拓だった大分県西部から福岡県の石ころや壁を求め探し歩いていた故人、野下善秋氏。生前は雨の日などに登りに来てくれ岩の話を聞かせてくれた。かつて聞いた話や氏の残してくれた情報をもとに私も様々なところを歩いてきた。氏の通った道は私の道標にもなっていた。ヒスイもその一片である。

 

 

 

 

 

くる年へ繋ぐ12月

2022年は、思うよう良い岩が登れた。
気持ちにも余裕が出来たので12月は衝動に流されず難しい岩に絞ろうと決めた。

狙うは3本。

1.   ヒスイのルーフ(通称LEBproject)
2.    VV3.0project
3.    ゾウネルラproject

普段であればその時格好良いと思う岩を、その瞬間最大熱量で狙う。
その衝動的熱量を捨て限界値を。3本。

 


最初に狙いを定めたのは

3.ゾウネルラp (よだかの岩)

市蔵のスタートからカンパネルラにつなげるライン、ゾウネルラ。実は初秋にmoveを発見していた。

12月8日 スタンドで初登

新たなシーケンスの発見で当初よりやさしくなってしまったものの、「ここが通せたら凄いラインの可能性が広がるな」なんて感じていたブランクセクションの突破に成功。

となると後はルーフの付け根から繋げるだけだ。
なんて簡単に書いたが下部はv10。果たして繋がるのか。

ゾウネルラlow start project

12月半ば、雨上がりでの挑戦にも関わらずラスト一手までは攻めることができた。
このまま通い勝負をかけようかと思った。

 


その矢先、仲間から春にヒスイを公開したいと相談を受けた。
となると1月中にヒスイのprojectは登っておきたい。ゾウネルラlowは春でもできる。仲間の気持ちを汲み、ヒスイのルーフを優先することにした。

 


1、ヒスイのルーフ

果てしないルーフ。
二日ほど通い全ての動きが解析できた、同時に自動化も進む。ルーフの奥行きが身近なものとなった。

となると早めに勝負をかけたい。そんな気持ちと裏腹に雪が。山が白く覆われる。雪解けルーフは染み出し年内の完成は絶望的となった。
それでも通う。できるパートの自動化をはかる、来たる瞬間をより早く迎えるために。

湿気た山で終えた2022年の岩登り。
岩の上に立つことは叶わなかったけど、
ゆく年に悔いなく、くる年を期待を。

2023年1月へ。

 

動画 よだか開拓記10【ゾウネルラ】

ヒスイのルーフ

ヒスイのルーフ。

昨年秋に最大核心である出口のmoveは解決。
ルーフど真ん中から登り

C’est bleu とした。

そのままルーフ最奥からの可能性を探り希望を見た。

時は過ぎ……

4月4日
あの日見た可能性を再現すべく再訪。いざ繋げようとしたものの記憶以上に強度が高く怖気付き迷いが出た。

2手目の逆手出しの可能性を探る。全ての手順が変わる。4時間探った末、キーホールドが欠損。今日1日が台無しになった。このままでは帰れないのでせめてもと良いシーケンスを探り形作ったところで撤収。

季節は終わりつつあるが何としてももう一回来ねば…。

4月18日

気温的にラストチャンスだろう。
太陽光の届きにくいルーフ最奥、当初はライトがないと過ぎせなかったが今はもう平気。

光の薄い最奥で腰を下ろしシューズを履く。チョークを付けつつ気持ちを落ち着かせ、整ったところで岩に体重を預ける。

夢中でmoveを起こす。
そして日差しが直に当たる場所に足をつきトライを終えた。リップまでは到達したのだ。流石のこのコンディション、登りきるのは端から狙っていなかった。上々だろう。

今の次元で何とかなることがわかった。結果的に適度な強度でやれそうだ。来季へ。

 

Direttissima v11/三段+

12月9日
大分出張に行く前の話。仕事は昼過ぎからだったのでちょっと大周りをし岩へ。

準備なくトライでき深追いしなさそうなものを選ぶ。(整備した二人に感謝)

1年前にmoveは作っていたので、まずはその確認。リミットは11時までだと考えていたので、10時50分あたりに狙いに入る。

核心はしっかり越えることができたがラストのランジ、ブラインドになっているガバを綺麗に外し無抵抗で落ちる。

おい!!!とツッコミ入れたくなったが、こと深刻で身体に大ダメージ受けた上にもう時間がない。

全力で10分間休み、11時に再びトライ。
指がすっぽ抜けてまたラスト一手で落ちる。敗退、終わったと思った。


時間を計算し直す。11時20分の出れば間に合うことがわかった。

11時10分、流石によれており核心突破できず。


もはやダメ元11時15分にラスト、これでダメなら終わりと決めたトライ。

核心は身体グラグラだったが何とか堪えて、ラストのランジもポジション決まりきる前にとぶ。
何とか持った。登り切ることに成功。

普段なら余韻に浸るところだが、何せ時間がない。撤収!!!
イベント準備前の心の調整になった。


ゴツいハングの中央、付け根のスタートホールド。
そこから思い切り左に腕を伸ばすと、顕著な弱点であるフレークに指が掛かる。その後フレークは右に湾曲するように続く。

フレークが途切れた先、細かいホールドひとつ挟みはさみ、良い距離間でガバが。

そう、これが先に栗崎によって初登された「聖玻璃」だ。

今回登ったラインは、左のフレークを無視しあえて真っ直ぐ登るという強点。
はっきりいってバリエーションだ。良いラインかはわからない。

取り付きはじめは「そのうち登ろう」程度に考えていたが、やはり本気でやってみると案外楽しい。

どんなラインでもやってみれば楽しいのか?
クライミングという行為自体が楽しいのか?
そもそも案外このラインが楽しいのか?

それはわからない。
トポに載るかも未定。

「direttissima v11(三/四段)」

 

焦がれた岩、そしてC’est bleu

【発見】

随分昔のこと、どうしてもたどり着けない岩があった。
先駆者から大体の位置は聞いていた。
近くを通るたびに探すが見つからず。
いつのまにか探すことを諦めていた。

昨年、とうとう仲間が発見。
聞いていたアプローチとは全然違う道だった。
結果的に同じ場所にたどりつく、これは偶然なのか必然なのか。それとも執念か。

どちらにせよ私だけではたどり着けなかった。
とんでもない悪路の先に開けた場所が。そこにいきなり巨石が在る。

【着手】

過去見上げたどの巨石にも劣らぬ存在感。残念な点をあげるとすれば少し脆い。
ただそれを補う好条件、アプローチ0/ランディングはフカフカの土、最高じゃないか。

見つけたその日から、仲間たちの岩通いがはじまった。時に違うエリアで登ったりもしていたけど、基本、そして今なお通い続けている。

私もずっと探していた岩。何とか形にしてほしいと願いつつ任せることにした。

【参戦】

巨石にラインができた。
2020年秋、私も登らせてもらう。

栗崎の登った中央から右に抜ける「聖玻璃」。言うまでもないがとんでもなく良いライン。

そしてもう一つ、右に抜けず岩の正面を直登。
こちらは「聖玻璃」以上に素晴らしいライン取り、栗崎のメインprojectだ。

時は過ぎ、奥の岩の開拓も進む。
入り口の巨石ほどではないが奥も中々良い岩がある。

その一つが丁度良い高さのルーフ。project進行の合間に仲間らが整備してくれ、春にトライを譲り受けた。

【トライ開始】

春の終わりにやる。

ルーフ出口、1本指ポケットとアンダーポケットからリップのブラインドポケットへフルスパンの一手が出来ず。あまり感触は良くなかったが、来季の気候であれば何とかなりそうな気がした。

【C’est bleu】

2021年初秋

一向に涼しくならず。10月ですら気温30℃を超える日が続く。涼しくなるのを待ちきれず出向く。
出来なかったルーフ出口の一手に成功。あとはもう登るだけなのだが、ここから苦戦した。

ルーフ出口のシーケンスが複雑かつシビアで、少しでもポジションがずれると吐き出される。少し気温が下がった日に狙いをかけるが、案の定リップ取りの一手をとめてからも落ち続けた。

核心はルーフ出口だと悟った。

2021年10月25日

気温万全、ただ早朝に強い雨が降り湿気ていた。
そもそもこの日登りきるという欲はなかったのでダラダラアップし、ほんのり狙いに入る。

核心が続く手数の多い課題は、離陸する前とても緊張する。

2トライ目、登りきることができた。

C’est Bleu(セブル) v13

【その後】

さて、最奥から。
明らかに完全ムチャぶりラインで取り付く前から若干諦めて気味だったけど、やりはじめるとやはり面白い。

結局私はルーフが好きなんだと。

少し早めに帰ろうと思っていたが結局夕方まで。思えばこの日も山を管理してくれているおじさまには会えずほんのりさみしい。

撤収、また。

整備してくれた仲間たち然り、岩を登るだけのために林道をつかっていることを快く受け入れてくれている地元の方に最大限の感謝を。