「RockPath」カテゴリーアーカイブ

菅岳 No Nome

福岡県南のエリア、菅岳。
時の流れの中埋もれたエリアの一つ。(実はネット上にトポもある。)
大昔、トポ上全ての課題を登ってからは行くこともなくなった。

/////
春が過ぎ、とうとうCovid19が地方にも広がりだす。行動も少し考えるようになる。
丁度その頃知人から菅岳の話を聞く。案外涼しく人もまずいない、今時素敵じゃないか!と。

5月28日
菅岳に出向く。当たり前だけど、人の気配は全くない。岩にはチョーク痕がチラホラと。多くはないだろうけどクライマーは来ている。

エリア奥のハイボールを見上げた。

20代前半の頃、たしかに見上げた記憶がある。けれど登ったかどうかは覚えていない。登ったとしてもどこをどう登ったか。。。当時、やまかずさんがどこかのラインに突っ込んでいき、4級だか3級にしたような、、違う岩だったような。ようは一切記憶にない。

とりあえず、いろいろやってみる。一番素敵なダブルカンテのラインはかなりやばい。そこをやる前に、その右の凹角を登る。こちらも、高さや岩の脆さ的に相当やばかったが、とりあえず4級か3級だと思う。リップからさき、積もった土がスリッピーで20分程度もたついてしまった。

車に戻る。ロープを準備し、掃除からやることに。リップに溜まった土、岩に引っ掛かった倒木、絡まる蔦、体重かけたら簡単に吹っ飛ぶフレーク…ひとつひとつ厄介で、かなりの時間を要した。

14時、ようやくクライミング再開。

見た目通りの内容、永遠コンプレッション(挟み込み)が続く。

せっかくのハイボール、新しい腰付チョークバックの使用感を確認したかったのだけれど、片手を離したら力の均衡が崩れ落ちる。コンプレッション系において、手を離すときは次のホールドを一瞬で狙うとき。よってチョークアップテストは厳しい。。。

ということで、地面でチョークバックの使用感を確認。これってジムでもできるような。。。?

さて、この日の登攀内容はというと
時間との勝負となった。

18時にはjoyの店番に戻りたい。

ハイボール、しかも後半核心のラインをやる際に時間的制限はかなりのプレッシャーとなる。
呼吸が整い指先の汗がひくタイミング、前腕のダメージがトライ可能なまで回復するタイミング、
そんなものが、焦ると若干狂い出す。

しょうもないミスが続き、時間ギリギリまでもつれ込んだ。

菅岳 ハイボールダブルカンテ NoName

右に逃げると易しくなるが、今回登った直登でのムーブグレードはv8/9(二段)くらいだろいか。ランディングが斜面ということもあり、後半パートの精神力削られる感じが何とも言えないが、シーケンス自体はとても面白く岩はかなり良い。

クラシックもいくつか再登したかったが完全なる時間切れ。またの機会に。

LonelyNightMagicSpell 初登

難しい岩を登れる季節が終わった。
それでも、ハードなクライミングがしたいという気持ちが強かった。

空白の4月、そして5月前半。
今年はこの季節に珍しく程よい気温が続き、岩を想う時間が長かった。

/////

5月25日
新たなprojectを探しに出る、来季のために。ついでに難しい岩に挑戦できればラッキーだ。

まず最初の狙いは玖珠川上釣のハイボール。過去一度だけやろうとするも、その時はランディングの悪さにビビリ突っ込めず。
今回はマットを二枚運び挑戦してみることに。

たるい棚にヒールで乗り込み、次の一手を探る。足がすっぽ抜けそうで怖い。ヒールが残って上半身から落ちるのも怖い。

前回やった際はmoveを起こし闇雲に次の一手を探ろうといたが、今回は明確なターゲットホールドを決めた。ひとまずリップ手前にカチが見えているのでそいつを狙うことに。

落ちたくない箇所の攻め方を学んだのだと思う。狙いを明確にすることで、目標とする動きや落ち方鮮明になる。すると、恐怖心も和らぐ。

試しにやってみた1便目、早くもその一手がとまった。リップへ。想像していたよりもたるい。一回降りることに。マットにジャンプする。衝撃は軽い。万が一ここで落ちても、大丈夫そうだ。

裏から周り、リップを掃除する。ホールドはないが、形状をうまく効かすことができると思った。しばらく休む。
その間にも気温はどんどん上がる。日差しも強く、岩は熱くなる。

はじめは秋に登れれば良いと考えていたが、目の前に登れそうな岩があれば、無意識に完登を意識する。
雲が出てきた。やる。

リップから先、形状がうまく効かすことができず少し焦ったが、何とか予定のmoveが決まり、無事にトップアウトに成功。早くも登れてしまった。

LonlyNightMagicSpell グレードはよくわからない。けれど間違いなく良い岩良いラインだと思う。

素晴らしい体験をすることはできたけど、秋の目標は見つからなかった。
時刻は15時。
時間はまだある、もう少し彷徨うことにした。

湯釣ルーフ 動画と課題とアクセス

先にアップした湯釣ルーフの登攀日記。
湯釣ルーフ周辺には特に良い岩はなく主だった課題は鬱金、ザクロ、ドグママグマの3本のみ。

それでも、ルーフのクライミングは面白く存在意義はあると思います。

湯釣ルーフの記憶 movie

ドグママグマv8
ザクロ v11
鬱金 v12

駐車位置等は既存のエリア、山側と同じです。
(メインエリアとなる山側のトポは昨年RockClimbing誌012で再公開。アクセス、エリア的に非クライマーと接触することはほぼほぼないと思います。平日であれば昼休み涼みにきた作業者に、駐車スペースで出会う可能性くらいかと)

誌面をチェックしてもらえたらと、さらに誌面購入してもらえたらとても嬉しいです!

湯釣上流のマニアックな情報については、以下リンクにて開拓協力金徴収のもと利用いただけたらと思います。こちらにもアクセス情報や課題情報、アプローチ、注意事項、鬱金のランディングについて記載しています。

湯釣上流ルーフ トポ

https://note.com/2020joywall/n/n2aa53bc11f20

安全に楽しんでもらえたら幸いです。

鬱金 v12/四段

今季(今となっては前季だけど)最大目標、RedNoah project。

3月に入りそれなりに通ったもののどうも勝負にならず、不完全燃焼に終わること度々。
そんな日は決まって天象ルーフに寄り、ずっと放置していたprojectをやった。

3月24日
高まる気温に終わりを感じ、今季のRedNoah挑戦を諦めることにした。

そしてターゲット変更。
まずは天象ルーフ側面。2015年時点ではまったく勝負にならず放置。

ザクロ v11(三/四段)

v11は幾分と前に到達していたグレードだけど、moveを解析する力や1手における突破力は今の方が遥かに良い。登れてみて思うは、過去もう少し頑張ればよかったのだと思う。


ちょこちょこやっていた天象のロースタート。

2015年初登の天象、ホールド欠損によりガバが出現し易しくなったわけだが、お陰でロースタートの可能性もうまれる。
メインprojectに見切りをつけたことだし、せっかくなので勝負してみようと。

最終チェックにmoveを確認。
すると…
キーホールドのガバが吹っ飛んだ。

相当難解なパズルを解きここまで仕上げたが、全て台無しだ。
妙なクロス、足送りのタイミング、しっくりこないジャム…
キーホールドがなくなったことで完成したはずの奇妙なパズルは跡形もなく崩れさった。

全てが台無しになり、次に出来上がったのは、パズルと呼べるような複雑なものではなく、完全なる真っ向勝。数度の足ブラをいかに耐えるか、かなりシンプルなシーケンス。

この日、繋げきれるほどの余力は残っていなかった。

4月6日 再訪
流石に体力あると全然感触が違った。moveを確認し、しばらくレスト。
そしていざ。

足ブラのフラレに耐えきれず…

川に落ちる。シューズがビシャビシャだ。実は5年前、天象をやった時も川に落ちた。その時の教訓が活き、フックの効くシューズをもう一足持ってきていた。

気を取り直して次の便、無事登りきることができた。

二度目の足ブラは結構ギリギリだった。むしろ前半ミスが続き、なぜ耐えれたかわからないくらいキツかった。後半パートもよく覚えておらず、
終始落ちるかもしれないと思いながら、川に落ちたくないなと思いながら前進。結果でいえば落ちることなく進むことができ岩の上へ。

鬱金 v12/四段

岩質はあまり良くないが、傾斜に見合った激しいmoveは極めて良い。ルーフ好きは是非トライしてもらえたらと。

一応この岩で登りたかった全てのラインが終わった。あと一本projectはあるがまたそのうちでよい。

湯釣上流に位置するルーフ
主要な課題はドグママグマ/ザクロ/鬱金の3本しかないが、どれも内容は濃いと思う。
アクセスと課題情報は次の記事にあげたい。

「ペインキラー」北部九州初期の二段の話

それまでももちろん、九州に二段はあった。
小川山や御岳、関西周辺で二段、もしくは三段を登ったクライマーもいた。
それでも「2005年」は記憶に残っている年。

/////

2005年4月
福岡のクライマー枝村さんによってペインキラー(二段)が初登される。
その後すぐ再び枝村さんにより糸島の海岸にて放浪カモメ(二段)が初登される。

九州ローカルによる二段の誕生
(これより前に伝説的クライマー外林氏により初登されたデッドマンウォーキングなどもあるが、それらはほとんどがv8なので実質は初/二段)

当時、枝村さんとほぼほぼ面識がなかったよう記憶している。むしろ当時の私はボルダリングの先駆者に「リードがしたいのでボルダリングはしません」などと平気で発言するような(私は記憶にない。。。)人間だったので、先駆者たちからすればあまり印象は良くなかったと思う。

それでも私は、枝村さんの記録をずっと見ていた。
中でも 放浪カモメ 二段 の記録は印象に残っている。もしかしたら明確に二段の初登を意識しだしたのは、これがきっかけだったのかもしれない。

同年秋
ルーさん(当時熊本在住)が祝子川にて「Stigma 二段」を
同時期、私(当時熊本にて学生)も尾平にて「風の子 二段」を初登した。

その後順調に二段というグレードが追加されていき、二段は九州のクライマーにとって馴染みあるグレードになったよう思う。

※2005年以前に登られたものの中にもホワイトラング(八面山 当時初段)など、いくつかおかしな初段もあり、以前からこの次元には到達しているように思う。

/////

ペインキラーと放浪カモメ

放浪カモメは縁あって 2014年6月、初登者である枝村さんに案内いただき登ることができた。
逆に、ペインキラーは見たことすらなかった。

ペインキラーのある脊振山には数度行ったことがあるのだけど、その時やった岩は全て山の上にあり、山の下にあるというペインキラーの存在すら認識していなかった。

/////

2019年冬、栗崎が先にペインキラーの前に立つも雨上がりでトライ出来ず。岩は凄くいいと聞いた。

/////

2020年5月
仲間ら数人と丁度タイミングがあった、ただし時間がない。どうするか話し合った結果、そこまで遠くないペインキラーへ向かうことに。

トライ出来ても1時間程度、半分敗退を覚悟して出向く。何せ放浪カモメは相当悪かった。

久留米から思った以上に近く、1時間半のトライを許された。岩はとても良い。フットホールドがどれも渋く解析も複雑で楽しげ。
moveがわかってきたところで感じたのは、身体にかかる強度は高さ、そして指皮を抉るかの如くホールド内に在る結晶のストレス。
これは厳しい、時間があったところで長時間のトライはできないだろう。悪名轟く理由がわかった気がした。

全moveができたところで時間わずか。気温の下がった秋に出直そうと、その日のためにmove練習。すると一番嫌な2手目の感触が良くなった。

指皮抉る覚悟で本気で狙うことに。多分一発勝負だろう。

しっかり登りきることができた。

初登後15年、何故か風の子を登った日の空気を思い出した。

当時の熱量を思い出せる課題、そうじゃない課題がある。
きっとこういう課題は思い出せる方に分類される。

トライを通じ、
課題生誕に全く関係ない人らにも、きっと熱量伝染することだろう。

コアなクライマーに是非ともやって欲しい。
強くそう思った。