ー 序章
美しいよだかの森のメインロック。
最初にできたのはその中央。
「 カンパネルラ 三段 /2020年夏 」
その後も執拗に通い、最後のライン「よだかの星 四段/2020年10月」ができた。これでメインロックは完結…そう思っていた。
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森の奥へ進む日々の中で眺めるメインロック、どうもカンパネルラと市蔵の間2mのブランクが「成っているのでは?」という疑念が沸いた。一見ホールドはない、けれど形状の噛み合わせが良くうまく押さえ込めばなんとか姿勢を保てるんじゃないか?
ー 触れる
ある日、ビッグプロジェクト群のトライの合間にやってみる。案の定全くできない…だけど不可能ではない。仮称「 ゾウネルラproject 」とし気長にやることにした。
※ゾウネルラ▶︎市蔵のスタートからカンパネルラの方向に行くので
2021年1月
全ムーブがバレさらにはラストのランジまで入れた。問題はその一手で狙い先のガバは遥か遠く…心を折るには十分な距離だった。
ー 小さなもの、大きな森
2024年春が終わった。今季も結局ゾウネルラと向き合わなかった。
挑戦から逃げている弱い自分、そして妙な責任感を自覚し来季こそは向き合うと決めた。来季のために少しでも、と森に向かう。
5月初頭
後ろ向きのモチベーションを抱え重い気持ちで森に入る。
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変わらず森は美しく。数歩進んだだけでネガティブなもの全てが吹っ飛んだ。
はやりこの森は別格だ。壮大なスケールの美しさ、エリアに入ればその地に見合う巨石群。そんなものを前にし自己のちっぽけさを思い出し明るい気持ちになれた。
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山深く実は涼しいよだかの森。
初日は雨上がりながら感触良く、晴れた日であれば勝負になりそうな気がして梅雨前線が活発のなる前にやり込もうと決めた。
ー その瞬間のために
通うこと3日目
ずっと落ち続けている最後のランジ。実はあわよくば止まるのではないかと思わせてくれるくらい進展していた。
“ ガバを捉える “ その瞬間が今日なのか次回なのか来季なのか。近い日なのか遠い日なのか。
その瞬間のために、一登のために準備と集中を怠らず、トライの時間を迎えたら一挙手一投足焦らず着実に力強く動く。
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目の前の一瞬に集中していたら思ったよりも早く期待していた時を迎えることができた。ガバを掴んだその瞬間、最高にテンションが上がると共に気持ちの糸も切れた。それでももう落ちない。
ー ジョバンニへと。そして。
ゾウネルラpは完成し名をジョバンニとした。グレードはよくわからない。登れたトライは全ムーブが完璧で負荷を感じなかった。それでも強度は高く四段以上はあるだろう。
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散歩しながら見上げた岩にまだまだやりたいラインが見えた。流石にもう暑い、秋にまた。