美しきよだかの森の源となる清流。
そのせせらぎ深く感じれる石壁(中央)をAyaさんが初登、「星を捕る人」。
存在感抜群でエリアを代表する課題。2020年10月のこと。
特徴的で超弱点の凹角の脇、超強点となるカンテ。ずっと気になっていたが、あまりに威圧的で取り付けないまま良い季節が終わった。
次のシーズンまでに掃除だけはしておこうと決めてもなかなか出向けず。
2021年6月
気は重い、それでも一分の可能性を期待し向かう。
道中、地元の師から連絡があった。詳細は略すが、深く心に刺さる内容で酷く動揺した。
行くのをやめようかと思い何度も車を停めたが、結局行った。
私はこれまで自分勝手に岩を登ってきた。時に、無意味なことに本気になれるからこそ自身にとって大切なことだと言い聞かせた。
今日も自分勝手にデカ目な岩をやる(ボルダーとしては)。社会的に何の意味も為さないどころか怪我のリスクもある。今、私は何をやっているんだ。
岩はいつもよりデカく見えた。上にまわり込み掃除の準備。ロープに身を預ける際、何度も確認した。相当弱っていることを自覚した。
掃除を進める。私の精神に追い討ちをかけるかのよう、リップ手前の棚は悪かった。成ってはいそうだが、今の私の心を折るには十分な強度だった。
掃除を終え、下部を少しだけやり、岩から去った。
この後プラトーに陥り岩を休む。誰にも話せないまましばらく過ごした。
2021年9月
良い季節の前に一度対峙しておきたかったので、再訪。夏の豪雨で荒れていたので再整備。前より冷静に判断でき、ボルダーとして登りきれることがわかった。
核心はあくまで中間部。今はできる気がしなかったが、コンディション次第だと感じた。
今年、秋は来なかった。10月に入っても暑い日が続き、葉は紅く染まらず。11月半ば、いきなり寒くなる。葉が一気に落ちる、きっとあの岩にも陽が入る頃だ。
11月29日
初級者を連れ山を歩く。道は湿気ているが岩はどうか。目標を見上げた。どうも黒く見える。
取り付くまではかなり緊張した。果たして達しているのか…。
核心入り口のフラットな12mmアンダー、フリクション勝負だと思っていたが、今回はちゃんと効くのを感じた。少し安心。
最初のトライは、狙いにくいポケットをかすめて落ちたが問題ない。すぐ捕らえれることを感じた。
その後すぐにしっかりと捕らえた。あとは上部にてメンタル勝負、そう思っていたがそんなに上手くいかず。どうも中間部が上手くハマらない。予想外のポイントで苦戦し、集中を余儀なくされた。
あるトライ、無心で動き続けリップを保持していた。登れる準備をしていなかったので驚き振り返り同行者と目があう。登れたのだ。
澄哲星 v13
清流に寄り添う石、その凹角は誰が見ても最弱点最中央。
「星を捕る人」は完璧なラインである。
その脇のカンテライン。仄かな存在に似合わず、どこまでも真っ直ぐで合理的。ふと見上げればきっと魅力に気付かされるだろう。
昼ご飯を済ませ移動。
連れは岩を掃除し一本初登を決めた。
コニタン v2
初めての掃除で苦戦していたがそれも楽しそうで良かった。
私もやさしい課題を登ったりprojectをトライしたりと有意義な時間を過ごした。
17時には暗くなりはじめたので下山。
車に着いた頃には一面真っ暗、冬の訪れを感じた。
撤収。